先述の②はヘルスプロモーションの戦略としての個人の力(主体づくりとしての健康教育)、③は社会の力(環境づくり)に相当しています。この報告書に基づいて、日本の健康創り運動にヘルスプロモーションが導入された意義をまとめると次の通りです。
- 人々の健康の格差をなくし、各人が平等かつ公正に健康を確保でき、生活の質(Quality of life)を向上できることを目指していること
- 疾病の早期発見・治療から、疾病を予防し健康を創ることへの方向転換がなされたこと
- 人々(素人)の能力等を重視し承認していること。人々は自分なりの健康観に基づいて生活しているので、専門家にはみられない新たな発見が生まれてくること
- 健康を生きる目的でなく生活の資源やQOLの要素として捉えていること。
- 健康教育による人々の能力の開発と環境整備とによるシステマチックなアプロ-チを提唱したこと。
また、ヘルスプロモーションの計画モデルであるPPモデルが導入されました。これは、健康教育計画のプリシードモデルと環境整備計画のプロシードモデルとで構成されていますが、健康教育計画の方が先に開発されていることから、人々の健康づくりの計画にあたっては、まず、個人の力を高める健康教育計画を優先し、その円滑な実施のために環境整備計画を行う必要があります。
この視点から、これまでの健康づくりを概観すると、箱(環境・社会の力づくり)が先で、その中に入れるもの(主体・個人の力づくり)は後まわしといったことやヘルスプロモーションと健康教育の概念が曖昧のまま取り扱われてきた嫌いがあります。
今後は、健康教育をヘルスプロモーションの2大機能の1つとして捉え、個人の力(主体づくり)の育成を目指して、「全ての人々が生涯にわたって、あらゆる社会的場面で、主体的に生き生きと過ごしていけるよう支援する学習指導過程」と解して、米国流のアクティブな旬間型、訪問型などを参考にしながら、教育学的アプローチとしての養成の目的やカリキュラム及び教材、学習指導過程(①知識・認識形成、情意形成、スキル・行動形成)→②ライフスタイルの改善→③健康状態の改善→④QOLの改善)の開発の充実強化を目指します。